2011年8月29日月曜日

福島県知事の困惑に、困惑しました。

仮定の話しです。
もし福島県の事業者が福島県民だけが使うものを生産する工場を東京都に作って、
その工場が深刻な事故を起こして周辺を汚染し、東京都民に健康被害の危険性を与えることになったとします。
その汚染は除去できるので、東京都が工場周辺の汚染物質の引き取りを、福島県に要求したとします。きちんと管理すれば、2次汚染を防げます。

その時、福島県民は汚染物質の引き取りを全部拒否して、東京都民だけに押し付けるべきでしょうか。東京都民に対して、福島県民は心が痛まないでしょうか。


8月27日に放射能汚染がれきの中間貯蔵施設を福島県に作ると、菅総理大臣が言ったとき、福島県知事は東京電力管内の自治体でも分担して引き取ってもらえるように調整してほしいと問うべきでした。

また、中間貯蔵は核燃料などの高レベル放射性物質処理の手法であり、
低レベル汚染のガレキ処理に中間貯蔵の必要はない。
がれき汚染問題を先送りするだけの、無用な時間設定だと指摘すべきでした。

福島県知事は、地方政府間の調整を中央政府に要求する場面だったと思います。

20世紀の戦争や公害の悲惨から学んだ教訓は、
人間はだれでも被害者であると同時に加害者でもあり、
加害者は同時に被害者でもあるという事実でした。
放射能汚染はこれまでの公害と同じです。

福島県知事は「困惑しています」などと言わず、
理由をあげて、きっぱり断るべきでした。
困難な道ですが、それが第一歩です。

2011年8月23日火曜日

いわき市の住民登録人口激減。(2011/8/1現在)

いわき市の住民登録人口が激減している。

震災前の2011年3月1日から震災後の8月1日の5カ月間で、住民登録している人口が6,450人減少した。
これは震災前の2009年10月から2011年3月まで2年半の6,401人減少とほぼ同じだ。
震災後わずか5カ月間に、減少速度が5倍に加速した。

2つの期間で、際立った相違点は世帯数の違いだ。
震災後5カ月で1449世帯減に対し、震災前2年半は3409世帯減。
震災後5カ月の世帯あたり人数では1世帯あたり4.5人、震災前の2009年から2年半では世帯あたり1.9人となる。

世帯数と人口の増減は、転入と転出の差と、自然増減の差だ。
単純にとらえると自然減が主因なら世帯数の減少より人口減少が少なくなり、
転出転入が主因で転出世帯あたり人数が転入世帯より大きければ、世帯数より人口減が比較的大きくなる。
また、世帯の中の一部だけ転出すれば、転出世帯あたり人数が多くなる。

震災後5カ月の1世帯あたりの大きな人口減少は、震災で亡くなった方(約300名)と、家族の一部だけの転出要因が大きい。
また世帯数の減少は、家族ぐるみ転出の要因が大きい。

震災前2年半の世帯減少は、家族の一部転出や死亡による自然減にともなって減少する要因が主で、世帯数に比べ人口減少は緩やかだ。

震災後の人口と世帯減少の大きな原因は、東京電力福島第一原子力発電所による放射能汚染だ。
家族の一部だけ転出するケースの一つが新聞で報道されていた。

福島県私立幼稚園協会の調査では、5月19日までに約2,300人の園児が県外に転園したり幼稚園に通うのを止め、いわき市では581人が退園している。
また福島県教育委員会によると、7月15日までに福島県内の小中学生7,672人が福島県外に転校しており、さらに夏休み中1081人が福島県外へ転校を希望している。高等学校では8月1日までに1028人が県外に転校している。
避難区域にある8つの高校への来年度の入学希望者は、定員1120人に対し409人と、定員の3分の1しかなく学校存続に影響を与えている。

放射能汚染を子育て世帯が深刻に受け止めている。

いわき市人口(いわき市HPより)
2011年 8月1日 世帯数 127,305 人口 334,952
2011年 3月1日 世帯数 128,754 人口 341,402

いわき市の人口指標 (平成20年10月1日現在)より
2009年10月1日 世帯数 132,163 人口 347,803 

2011年8月22日月曜日

ほんの少し除染するだけでもOKの法案?? 住民不在で、環境省へ丸投げ。

『放射性物質による環境汚染への対処に関する特別措置法案骨子案』を読んで、ビックリしてしまった。
環境省に丸投げして、フリーハンドどころか、ゴッドハンド付与法になっている。

国民の健康を守るために国が誠意を持って除染するのではなく、形だけアリバイ程度でも除染すればいいと、汚染放置の言い訳の根拠を与える法律になっている。環境省の考えた通り除染して、それで終わりでもかまわないという法律だ。
原子力や放射能汚染と向き合う理念もない、災いの種を撒く悪法ではないのか。

1.除染の目的が「影響を速やかに低減」などとあいまいで、環境省が住民の健康被害の危険性や実態などに耳を貸さなかったり無視して、一方的に目標値や除染対象を決められる。
2.環境省が国民に命令可能だ。(仮置場、中間処理場、最終処理場、処理方法)
3.環境省の責任が明確でなく、都合の悪い事が出ても居直れるし、逃げの口実になりそうだ。

誠実に除染せよと国や放射能汚染原因の会社に命じない住民不在の法律。これが議員立法だというから情けない。
福島県選出の国会議員の賛否を注目しようと思う。

放射性物質による環境汚染への対処に関する特別措置法案骨子案資料
http://www.taniokachannel.com/report/recource0803_5.pdf

朝日新聞 2011年8月18日より
除染・がれき処理法案で国説明
●「責任を明確に」自治体から批判次々
東京電力福島第一原発の事故で放射性物質に汚染された土の除染やがれき処理に関する特別措置法案の自治体向け説明会が17日、福島市内であった。自治体側からは「国の責任をもっと明確にしてほしい」や「具体的な部分が何も決まっていない」といった批判的な意見が相次いだ。
説明会は2日、10日に続き3回目。県内の自治体や一部事務組合の担当者約60人が参加した。
土壌などの除染が必要な地域を環境相が「特別地域」に指定し国が除染する▽より線量が低い場所は「重点調査地域」に指定し県や自治体が除染、必要に応じて国が代行する▽汚染された廃棄物の処理は「対策地域」を指定し国が責任を負う——など法案の概要を環境省の担当者が説明。自治体側からの意見や質問を受け付けた。
中通りの一部事務組合の担当者は「一番知りたい放射性廃棄物の処分場の場所や除染方法について何も触れられていない」と批判。法案が「国民の責務」に触れている点を挙げ、「法律が住民に処分場建設を受け入れさせる道具にならないか心配だ」と語った。
また、中通りの自治体担当者は「具体的にどの場所が地域指定されるのか説明がなかった。指定されなかった場合、国の責任があいまいになることがないようにしてほしい」と話した。
地域指定の基準は、法制定後に環境省が定めることになっている。しかし、説明会終了後、環境省の鷺坂長美(おさみ)水・大気環境局長は報道陣の取材に「法案ができたら、それに従って至急決めなければならない。現時点ではできるだけ早くとしか申し上げられない」と述べるにとどめた。
同法案は議員立法。今後、民主、自民、公明の3党協議を経て、今国会で成立する見通し。(小寺陽一郎)

2011年8月14日日曜日

『福島原発の真実』は、どんな真実か。 

前福県知事の佐藤栄佐久氏の『福島原発の真実』(平凡社)を読んだ。
原子力発電をめぐる国と佐藤栄佐久前知事の対立を、前知事の立場から書いている。

どうして最近、佐藤栄佐久前知事が原発を告発する言動を活発に行っているか、この本を読むと分る。主張も事実関係も整理され、県知事としてどのように対応していたかを、冷静に記述している。

電源三法による交付金は自治体の財政をいびつにし原発依存を強める。国の原子力行政の在り方は危険性を高める要因の一つだと指摘する。地方の自治体にとって、原子力発電所がどのような存在かが明解だ。

そして、原子力行政は民主主義が問われると、原子力発電所事故の本質も鋭く指摘している。

ただ、一人の県民としては少し違和感もある。
核燃料税や、プルサーマルの件だ。

98年にプルサーマル開始を福島県が了解したのは、97年のJヴレッジオープン後だったので、Jヴィレッジの施設の寄付と引き換えに、プルサーマルを容認したように見えた。

02年に核燃料税を引き上げをめぐる議論の最中に、東京電力の検査データ改ざんが発覚した。とこが、核燃料税引き上げが認可されて、しばらくすると原発が運転を再開した。再開を認める条件や理由がよく理解できなかった。そのため原発運転再開を核燃料税引き上げの圧力に利用しているように見えた。

これまで原子力発電をめぐる不祥事や事故、そして原子力行政の行き詰まりを、国や東京電力が『金』で解決してきた歴史をずっと目にして来た。

だから、福島県は旧態依然とした手法で、国や東京電力からお金を引き出す方策に走り、地域社会が原子力発電所へ依存を深める道を歩んでいるのではないか、本気で原子力発電所の安全を検討していないのではないかと、一連の対応を批判的に見ていた。

核燃料税引き上げは、福島空港、農道空港、あぶくま高速道などの大型公共事業で弱体化する県財政の資金策で、原子力発電の冥加金でバラマキ行政の帳尻を合わせようとしているのではないか、と考えていた。

日本では90年初めのバブル崩壊後、銀行に痛みが出ないように不良債権処理策を行って、金融改革を怠り、97年の金融恐慌を引き起こした。
欧米の銀行では支店数も行員数も給料も減少しているのに、日本では3つとも増やしていると、絶望的な日本の金融界のレポートが95年に出ていた。
分っていても対処しない不作為が行われていた。

次の90年代後半は景気対策で財政規律が弛緩し、財政悪化が起きるのが明白なのに政治家は鈍感だった。
97年金融恐慌直後の福島県議会議員選挙で、いわき選挙区の候補者全員が地方財政悪化に全く言及していないのが、印象的だった。1980年代の地方財政危機の熱さは、まだ喉元に残っているだろうに、この呑気で鈍感なのはどうしたことかと疑念が湧いた。
地方自治体は分っているのに真剣に対応しないで、地方交付税特会を既得権として財政破綻という不作為を行なうのだろうと考えた。

人生と名誉を懸けて国や東京電力と戦っている前知事には申し訳なかったが、特捜の逮捕の時に深く考える事もしなかった。前知事を支持しようという気になれなかった。

原子力発電所が深刻な事故を引き起こした今は、前知事が的を射抜いていたと理解できる。
違和感はあっても、原子力政策は民主主義が問われるという主張に同意するのに、福島県の政策からどうして汲み取れなかったのか、支持しようとしなかったのかを考えると、自分の不明も同時に感じる。

『福島原発の真実』は、一人の県民として苦く重い。

佐藤栄佐久前知事は、収賄容疑で5年前に逮捕され辞職した。裁判は1審有罪、高裁2審判決では収賄額がゼロ円だが、有罪となった。現在は最高裁で争われている。『福島原発の真実』平凡社

2011年8月11日木曜日

呆れた佐賀県知事

時計の針を逆に回すような、
やらせメール事件が起きている。

九州電力の原子力発電所の運転再開のために、
運転再開に賛成するメールを出すよう、
佐賀県知事が九州電力関係者に話したと、報道されている。

佐賀県知事が、やらせではない事をきちんと説明するのかと、
知事の検証報告の報道を待っていたが出てこない。
やらせは『確定』のようだ。

やらせ、隠蔽、開き直り。
これまで福島県で原子力発電を推進してきた、
電力会社や行政の負の遺産と同じ事を繰り返し、
悲劇と失敗に学ばない呆れた佐賀県の現職知事。

原子力発電所事故の惨禍は県境も国境も区別がない。

佐賀県民にも、周辺自治体や近隣国の住民にとっても、
迷惑で不幸だ。