2012年2月8日水曜日

いつやるか…。

くじらおかさんは、いわき市で農業をしている。日本酒を飲みながら静かに話す。
「田んぼは1年で1ミリ表土がつくられる。3センチだと30年。はじめにゼオライトを撒いてから、3センチひっくり返す。次に30センチひっくり返す」

300年前の土が表土になる。農は土作りから始まる。今年はゼロからではないが、江戸時代の土で始める。明治以降の新田や耕土が浅いとゼロからになる。

農地の放射能汚染に、どう対処するのか、くじらおかさんはいろいろな試みを見てきて、天地返しする(反転耕)ことにした。

除染はできない。膨大な汚染土を処理する現実的な方法が、今はない。

『その方法は1回しか使えない。今年また原発がドカンとなって、風がこっちに吹いてきたら次はできない。だけど言わなくても、くじらおかさんは分かってるだろう』、僕はそう思いながら黙って飲む。
くじらおかさんも、飲みながら考えている。

くじらおかさんが、酒を一口飲んでまた続ける。「普通の栽培だと、耕すのは15センチ、根はそれより深く入らない。だけど、30センチ天地返ししたら入るかもしれない」

今年やるか…。重い決断が、春に待っている。

いわき市の水田=2011-6月