8月に郷土復興のための公演をいわき市で行うために、
浪江町請戸の『田植踊り』の練習を、
避難先の二本松市で始めたと福島民友新聞に載っていた。
伝統芸能の『田植踊り』を、異郷で行うため異郷で練習している。
今、請戸地区は隣町にあった原子力発電所事故のため立ち入り禁止区域になっている。
農民で市井の民俗学者でもあった故和田文夫さんと一緒に、浪江町に行ったことがあった。
「『田植踊り』があるのは寒冷地で、稲作で冷害が多かった地方に残っている。いわき地方にはほとんどなくて、双葉や相馬地方にはある。『田植踊り』には厳しい自然に向きあう人達の祈りがある」
和田さんはそう話していた。
浪江町には阿武隈高地から太平洋に流れ込む請戸川がある。
雪や雨は、地下にもしみ込んで伏流水になり、浪江町で湧き出す。
浪江の名水だ。
この名水を使う酒蔵が昔からあり、製薬会社は栄養ドリンクを作っていた。
滋養のある水は太平洋に流れ込んで、沿岸は豊かな漁場になっていた。
浪江町は東北電力が原子力発電所の建設予定地にしている。
計画が発表されて30年が過ぎたが、建設には地元の反対が強く、
今だに建っていない。
隣接している双葉町は原子力発電所を誘致し増設を求めたが、
浪江町は原子力発電所を建設させなかった。
しかし、隣接した二つの町を放射能汚染は区別しない。
地域のために原子力発電所を積極的に誘致した町だけでなく、
地域のために阻止した町にも惨禍はやってきた。
国が佐賀県に原子力発電所の再稼働を求めている記事もある。
全電源喪失という原発事故にともなう交通の大混乱を想定すれば、外部応援は期待できない。
配備した電源車の電気で、稼働している原発全機の冷却装置を賄えるのか。
保安院が水素爆発対策とする『ドリル』は分厚いコンクリート外壁を貫けるのか。
コンクリート貫通の所要時間は、
作業の足場や、
貫通予定場所にたどり着く通路は、
ドリルを動かす電源は、
事故の混乱の中で確保されるのか。
そしてなにより、
だれが水素爆発の危険の中で行うのか。
せめて電動と手動の2系統をもつ複数の開閉口を建屋に設置するための、時間と手間を、
国や原子力発電所立地町が惜しんでいる。
国や電力会社、そして地元の町が、自らの安全思想を検証した形跡が見えない。
それを是とする政治家の安全に対する見識は肯定されるべきか否か。
発電所周辺には歴史に育まれたたくさんの町や村があり、
多様な生き方をしている人がいるだろう。
原子力発電所が事故を起こせば、
放射能汚染は、人生をかけて発掘を行った遺跡群『吉野ヶ里』も、丹精込めた農地も、豊かな漁場も容赦しない。
農地に山林に海に宅地に学校に、どの町にも、風に乗り区別なく放射能は降る。
我が町、郷土のための施策が、隣接町村に牙をむき、多くの町村に惨禍をもたらす。
浪江町請戸の『田植踊り』が異郷で奉納する「祈り」の重さを思うと、農地に山林に海に宅地に学校に、どの町にも、風に乗り区別なく放射能は降る。
我が町、郷土のための施策が、隣接町村に牙をむき、多くの町村に惨禍をもたらす。
報道で伝えられる佐賀県の原子力発電再開をめぐるニュースは、
関係者の動きが軽すぎるとしか思えない。

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