2011年4月30日土曜日

原子力発電所事故、国会論戦で気になった事。

 缶コーヒーの宣伝で、「贅沢言うな。いろんなことがこんがらがってこうなっているんだから、今すぐはムリだ!」というCMがありました。


 国会論戦で、聴き応えのあるものが多かったのですが、気掛かりな質問もありました。
 東京電力原子力発電所事故の収束に向けた工程表をめぐる、「この日程でやると言い切らないのは無責任だ」という論調です。
『いろんなことがこんがらがってこうなっているんだから、確約できる訳がない』という事を、百も承知で質問しているのだろうと思いながら聴いていました。


 高レベルの放射能で汚染されている原子力発電所の中で、被ばくと余震の危険の中、最前線で苦闘しているたくさんの人の安全や健康をどう考えているのかと思い、質問している国会議員の態度が『贅沢』というより『傲慢』に感じられました。
 一日も早い事故収束も大切ですが、原子力発電所の最前線で働く人の健康や生命も大切です 


 また住民にとっては一日も早い事故収束とともに、避難先から地元に戻るのに不可欠な、土壌や設備や施設そして建物などの除染策の見通しも大切です。


 未来への希望がなければ、今の苦労は意味がなくなります。 


 自分の町に、自分の村に戻るために、どの段階で何をやるか住民が自分で考えて、除染工程を練り始めるべきです。
 そして町や村に戻る工程表を示しながら『みんな、こうなったらこうするから応援してほしい。』と、住民が政府や東京電力に補償を要求したり、全国や海外に支援を要請するのは、ちっとも贅沢でも傲慢でもないと思います。


 「いろんなことがこんがらがってこうなっていても、自分たちの現在と未来を他人任せにしない事が一番大切だ!」と、国会論戦を聴きながらあらためて思いました。


(馬上雅裕)


検証==政府と東京電力が信用を失った広報=3月12日と13日。



東京電力原子力発電所のレベル7の事故に対する、政府と東京電力の原子力広報を検証すると、事故発生の初期に情報を適切に伝えず、住民を軽く見ていたとしか思えない態度だったことが分ります。

3月12日午後3時26分に、東京電力福島第一原子力発電所で、水素爆発が起きました。
しかし、政府と東京電力は、原子炉建屋で何が起きたのかを、事故発生当初は、迅速に正確に伝えませんでした。

内閣府のネットサイトで記者発表を見直してみました。
3月12日午後の枝野官房長官の会見です。

水素爆発から数時間たっているのに、まだ、何が起きているのか正確に伝えられないと繰り返しています。政府が迅速に状況を把握し評価できない、また、事態を適切に伝えられない情けない姿です。
これは、好意的に慎重であると解釈もできます。
しかし、住民の理解力を侮っている態度と解釈されても仕方ないものです。

東京電力第一原子力発電所の12日午後11時の発表より。
「1号機(停止中)
・原子炉は停止しておりますが、本日午後3時36分頃、直下型の大きな揺れが発生し、1号機付近で大きな音があり白煙が発生したことから、現在、調査中です。」

7時間も前に水素爆発を起こしていながら、どこで何が起こっているのか、住民に正確に迅速に伝えようとしない東京電力の姿がここにあります。

ところがその翌日の13日、1号機建屋の上部が吹き飛び、鉄骨だけになっている映像をテレビのニュースで見て、『白煙、揺れ、大きな音』が爆発であった事を住民は知ります。
政府と東京電力の情報を迅速に出さない態度は、裏目に出ました。
爆発なのに『白煙、揺れ、大きな音』と表現し、事態を小さく見せかけようとしてるのだと住民に分って、信用を失ってしまいました。

さらに、13日の夕方には枝野官房長官が放射線について話す内容がNHKニュースで報道され、長官が放射線に『無知』だと思われるような発言が紹介されます。

3月13日夕方のNHKニュースより
『枝野官房長官は、3号機周辺の放射性物質のモニタリング数値について「モニタリングでは、13日午前10時以降、50マイクロシーベルト前後の数値で安定していたが、午後1時44分ごろから上昇し、1時52分には1557.5マイクロシーベルトを観測した。ただ、その後、午後2時42分のデータでは、184.1マイクロシーベルトに低下している」と述べました。
そして、放射線の数値が一時的に上がった原因については「炉心が水没していない状況になると、放射線の発生がその時間は多くなるので、一時的に数値が上がる」と述べました。』

炉心の核反応による放射線が、原子力発電所周辺の環境放射線量に直ちに影響し、一時的に数値が上がる事はありません。
原子炉とその中の水、格納容器、分厚いコンクリート壁が、放射線を外に出さない構造になっているのです。原子力発電所を見学したことのある工業高校生でも、その時に渡される資料レベルの説明で、この程度のことは分ります。

発電所敷地内の放射線量の数値上昇は、原子炉建屋から放射能が放出され、放射能汚染が発電所境界を越えて広がっていくことを示すものです。 
枝野官房長官の記者会見のニュースは、政府広報を担当している政府高官が原子力発電所の事故を、迅速に正確に把握し伝える能力を持っていないことを映し出しました。
重大な決断や、状況把握が出来ていないのではないかとの疑念も湧きます。

いろいろと言い訳はあるでしょう。
しかし広報では簡潔に正確に
  1. 原子炉内の冷却を制御できていない深刻な事故であること、
  2. 放射能汚染が原子力発電所の外に広がること、
  3. 風向や降雨に注意を呼びかけることなど、住民に危険や健康被害から自分や家族を守る適切な防護方法を伝えながら、
  4. 冷静な対応を呼びかけるべきでした。
政府は、4の冷静な対応を呼びかけましたが、1〜3を迅速に分りやすい情報として伝えることはしませんでした。
これらの結果、事故の初期段階で信用を失った政府と東京電力の広報は、この後の社会混乱の原因となり、大きな損害を社会に与えました。


3月12日以前は事態を小さく見せて時間稼ぎをし、住民が忘れるのを待つような手法が原子力発電の広報で通用したのでしょうが、今回の事故はそれで済まされないと、政府と東京電力には肝に銘じてもらいたいと思います。


(馬上雅裕)

2011年4月27日水曜日

いわき市の露地栽培原木シイタケ出荷制限解除!です。

いわき市の露地栽培の原木シイタケが、4月25日に発表された出荷制限要請から外れました。
福島県全域を対象にした原乳出荷制限(3月21日付)も、いわき市はすでに4月21日(4月16日付)の発表で外れています。


福島県のモニタリング情報からいわき市の農産物(露地栽培)データの一部を抜粋しました。(単位ベクレル/キログラム)

4/23発表(19日調査露地栽培) 
品目/トマト    ヨウ素131→7   セシウム134→16  セシウム137→15


4/13発表(11日調査露地栽培)
品目/ブロッコリー ヨウ素131→160  セシウム134→120 セシウム137→120

4/6発表(3,4日調査露地栽培)
品目/ブロッコリー ヨウ素131→660  セシウム134→340 セシウム137→290

3/23発表(21日調査露地栽培)
品目/ブロッコリー ヨウ素131→8100 セシウム134→870 セシウム137→910



しいたけ 

 Q.販売されている福島県産しいたけを食べてもだいじょうぶですか?
A.福島県では、露地栽培の原木しいたけ、施設栽培の原木しいたけ、菌床栽培のしいたけ、なめこ、まいたけ、エリンギ、えのきたけ等のきのこが生産されています。これらのきのこで施設栽培されているものや、出荷が制限されていない区域の露地栽培の原木しいたけについては、放射性物質が検出されていないか、規制値以下となっています。
 また、福島県では、販売されているしいたけの情報が消費者にわかるように、産地の市町村名や栽培方法を表示することとしています。また、安全なしいたけが流通するよう、県職員の方々等が、適正に表示されているか、出荷が制限されている区域の露地栽培の原木しいたけが流通していないか等について、生産地や流通拠点を巡回して確認することとしています。
 なお、福島県で、露地栽培の原木しいたけの出荷が制限されている区域は4月25日時点で、福島市、伊達市、本宮市、相馬市、南相馬市、田村市、新地町、川俣町、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町、飯舘村、葛尾村及び川内村の17市町村です。

 Q.福島県の17市町村では、露地栽培の原木しいたけだけが出荷制限されているのはなぜですか?
A.福島県では、4月24日までに施設栽培の原木しいたけ、菌床しいたけ、なめこ、まいたけ、エリンギ、えのきたけの66件について、放射性物質の検査が行われました。その結果、暫定規制値を超える放射性物質は検出されませんでした。
 一方、露地栽培の原木しいたけについては、52件のうち14件(いわき市、伊達市、新地町、飯舘村、福島市、南相馬市、川俣町及び本宮市)から暫定規制値を超える放射性物質が検出されました。露地栽培は、屋外にほだ木(原木にしいたけ菌を植えたもの)を立てかけ、外気や日光に触れさせてしいたけを育てる栽培方法です。このため、露地栽培は、大気中にある放射性物質と接触する可能性が施設栽培よりも高いことが考えらえます。こうした調査の結果を受けて、原子力安全委員会の助言を得て4月13日、4月18日及び4月25日に出荷が制限されたものです。


 このうち、いわき市については、4月24日までに放射性物質が暫定規制値を下回るようになったため、4月25日に出荷制限が解除され、4月25日現在では、福島県の17市町村が出荷制限されております。
 
福島県においては今後、露地栽培、施設栽培に関わらず、また出荷が制限されていない区域についても、しいたけ等の放射性物質の検査を行い、その結果については、その都度公表されることとなっております。
 出荷制限の解除については、出荷が制限されている区域において、約1週間毎に検査して、3回連続で放射性物質が一定水準を下回った場合に、原子力災害対策本部において、出荷制限を解除するかどうかの判断がなされます。出荷制限の解除後も、約1週間ごとに検査を実施することとしています。


(馬上雅裕)

2011年4月15日金曜日

桜が咲き始めました。


取材で末続に行き、配本で広野まで足を伸ばしました。
緊急時避難準備地域指定があるので、立ち入るにはニュースや現地での規制や指示などに注意したり配慮が必要です。

まちメディアを置いていただいている「九州ラーメンおいどん亭」さんが、営業再開(午後3時まで)していました。

広野町は「東北に春をつげる町」がキャッチフレーズ。静かに、町役場の桜が咲いています。

広野町は双葉郡の南端にあります。
南はいわき市、北は楢葉町です。夕筋、折木、上浅見川、下浅見川、上北迫、下北迫の江戸時代からの6村が合併して、明治に広野村が誕生しました。常磐線が開通したのは明治31年、町になったのは昭和になってからです。

かつては炭鉱があり、今は火力発電所がある美しい町です。

(馬上雅裕)

2011年4月6日水曜日

まちメディア4月号は配本中。5月号は4月25日発行予定です。

3月11日に『まちメディア』4月号の製本ができましたが、東日本大震災のため、ほとんど配本できませんでした。

その後、震災のために配本先のお店が休業していたり、12日からは原子力発電所が水素爆発して放射能汚染が拡大したため、スタッフが自主避難したりして、配本を再開したのが3月25日になってしましました。

4月に入っても休業中のお店があって、現在も配本中ですが、お店を再開した皆さんは元気です。

(馬上雅裕)

2011年4月5日火曜日

福島県農林水産部が、原木シイタケ出荷しないように要請。県が独自の判断。

福島県農林水産部が独自の判断で、いわき市の露地栽培の原木シイタケを市場に出荷しないよう要請したと、NHKの朝のニュースで報道していました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110403/k10015079991000.html

http://www.minyu-net.com/news/news/0404/news2.html

消費者と市場を大切にする姿勢が明確で、不安や不信を招かない賢明な判断です。


国は放射能の基準値を越える検査結果が出た事に対して、発表しただけで何も対策を講じないため、福島県が独自の判断で出荷しないよう要請したようです。

消費者保護を最優先させ、基準を超えた農産物を市場に出さない、福島県の姿勢を『まちメディア』では高く評価したいと思います。

『市場に出荷されている農産物は安心だ』と消費者に支持されるには、厳しく原則を守る施策を積み重ねるしか道はありません。

迷走する国の対応に比べて、ニュースで報じられた福島県の態度は正しく分りやすくて、清々しさを感じました。

なお、屋内施設で栽培しているいわき市の菌床シイタケは基準よりも低かったようです。

(馬上雅裕)

2011年4月2日土曜日

風評被害と地産地消と『まちメディア』

私たちは深刻な放射能汚染に直面しています。

福島県の農産物が売れないとの報道が相次いでいます。
マスコミは、『風評被害』だと言います。

被害者がいるのですから、加害者がいるはずです。
生産者が被害者です。
では、加害者は放射線や放射能、放射性物質の区別も良く分らない無知な消費者なのでしょうか?

私たちは、そうは思いません。

消費者が放射能汚染を恐れる消費行動は正当です。
 
放射能汚染を恐れて福島県産を敬遠する消費者も、農業者や漁業者と同じ被害者だと、まち・メディアでは考えます。

加害者は、大地や海を放射能で汚染している東京電力福島原子力発電所の事故です。

私たちは、『風評被害』と言われる消費者の行動は、被害に対しては2次的なものだと思います。
農業と漁業に被害を与えている一番の元凶は、東京電力福島原子力発電所の事故です。

まちメディアでは何年も、地産地消と食育をテーマに『いわきの美味しさ発見』を連載してきました。
地産地消は地域の経済にとって大切です。これからも、応援していきます。
http://www.matimd.com/oishisa/o_index.html


でも、人の健康や命はもっと大切です。
私たちは、厚生労働省が食品に含まれる放射性物質の許容量を定めた暫定基準値をこれ以上緩めることなく堅持すべきだと考えています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e.html

生産者と行政には、基準を緩めて消費者の健康と命の危険性を高めるような行動をとらないよう望んでいます。(緊急事態が収束すれば速やかに輸入食品水準に戻す)
放射能汚染による損害は、加害者である東京電力と政府に賠償させるべきです。

なにより消費者を優先する生産者の姿勢と、巨大企業にもしっかり言うべき事を言う毅然とした態度でしか風評被害は乗り越えられません。
お客さまを一番に考える姿を見なければ、消費者の心に安心や信頼は生まれません。

厳しい道ですが、まちメディアも共に歩みたいと思います。

(馬上雅裕)