2011年6月13日月曜日

火ぶたが切られました。

環境省が、
原子力発電所事故の放射能汚染地域の住民に対して、
火ぶたを切りました。
放射能汚染瓦礫の最終処分は福島で行うと通告してきました。

足尾、水俣、神通川、阿賀野川、四日市、豊島。
被害者が本当の事を話し始めると、
周囲からは罵詈雑言を浴びせられ、疎まれ、
仲間からはずされました。

これが、住民にとって本当の戦いです。
差別され蔑視され侮辱され、
理不尽な悲しみで、言葉にならないことも
たくさん起きるでしょう。

冷静に厳密に現実を見つめ、一歩一歩、
いつまでも歩き続け、語り続けるしかありません。
辛く長い道です。


被害者は、みんなそうして来ました。
杞憂であってほしいと願っています。
しかし、覚悟するしかないだろうと思います。

2011年6月12日日曜日

どさくさまぎれの、最終処分?

 福島県知事に環境省の次官が会いに来て、放射能で汚染された瓦礫を福島県外に運び出すのは難しいと言って帰った。
 知事の返答は、『県内に、このまま置く事は考えられない』だった。

 写真は『まちメディア』6月号の表紙写真の取材時に、いわき市久之浜町で撮影した。3月11日の津波の被災現場だ。このピアノは3月11日は、放射能で汚染されていなかった。
 もし汚染されたとすれば、3月12日以降。 原子力発電所事故で敷地外に、国と東京電力が放射能を出したからだ。
 汚染したのは、国と東京電力に管理責任のある原子力発電所の事故だ。責任は、ピアノの所有者ではなく、国と東京電力にある。
 もし、ピアノ所有者が瓦礫として処分して欲しいと望めば、安全に処理する責任は、国と東京電力にある。

 それが、地元感情だ。
 
 福島県内で土壌汚染が深刻化している。
 福島県郡山市で学校の校庭が汚染され、市が除染した時に出る汚染土を、どう処理するかの問題が残った。
 正義感からの発言だとは思うが、「校庭の砂を福島原子力発電所に運べばいい」との発言をテレビで聴いた。
 『報道ステーション』の解説者だ。

 2度目に、「原子力発電所に汚染土を運べ」という主張を聴いたのは『テレビタックル』のゲストの大学教授の発言だった。

 福島第一原子力発電所は福島県の大熊町と双葉町にある。汚染土を、この2つの町に運べという主張だ。
 軽率な発言ではないだろうか。

 核を使用して出た放射性物質の最終処理を、事故での汚染土壌であろうと、発電後の廃棄物であろうと、正義感や思いつきで決めてはいけない。
 国と東京電力の事故を起こしませんという約束があるから、福島県も2町も原子力発電所を受け入れているが、最終処分場は受け入れていない。

  どさくさまぎれの最終処分など、「考えられない」。

 環境省次官の『運び出せない』発言は、3度目に聴いた軽率発言だ。
 環境省次官の来県は、原子力発電所事故の加害者が被害者に損害の後始末を押しつけに来たと、住民として受け止めた。

 核廃棄物の最終処分は東京電力の本社所在地や、東京電力の電気を使っている地域も責任を分担すべきだ。国は、早急に受益関係者を集めて協議を始ねばならない。

 福島県知事の発言は、国の原子力政策の根本を問う重い言葉だ。

2011年6月9日木曜日

『原発事故にかかる仮払補償金請求』説明会

 6月9日、東京電力福島県原子力補償相談室福島県中小企業団体中央会が、いわき市内で説明会を開いたので出席しました。
 今回は第一次指針の第3項目「政府による避難指示に係る損害」のうち、中小企業(避難指示区域内)に対する補償の説明でした。

 東京電力社員2人が前で説明をしました。出席者は静かに話しを聞き、説明後の質問も穏やかなのが印象的でした。

 説明会の後、富岡町に食品流通加工の事業所を持っている人と話しました。

 「まだ虚脱状態で、天災ならとっくに動けるのに、原発事故は先が全く見えなくて、みんな身動きがとれないでいるんです。銀行が支払い猶予をいつまでするのか、その期限が来たとき倒れる所が多いと経営者は思っています。従業員さんは、もっと深刻です。すでに働く場所がなくて、避難所が7月までで閉鎖されると、仮設住宅に行くしかなくなります。生活費は自分で出さなきゃならないのに収入が無くて、就職のあてもない中にいます」と心配していました。

 いわきは動き始めましたが、双葉や相馬は時間がほとんど止まったままのようです。
 
 「再建に向かって活動を始めた人もいるけど、ほんとうに一握り、珍しいんだよ」

 原子力発電所から半径30キロ圏内でも、原発と関係のない会社が多く、それでも会場で静かに説明を聞いている中小企業家の姿を見ると、あらためて、東京電力と政府の罪深さを感じました。

2011年6月5日日曜日

いわき市の人口

 「いわきは、どうですか?」と、会津の人に尋ねられた。
 会津美里町では、仮設住宅を250戸建ったが入居希望が100戸しかなかったと言う。

 いわき市の仮設住宅は、約200戸に申込数が600戸以上あると報道されている。
 
 いわき市のホームページでは平成23年3月1日現在、総人口341,402人 世帯数128,754世帯のままで、4月、5月、6月の数字がない。

 いわき市が東日本大震災や原子力発電所事故に、どう向き合っているのかを知る基礎データが入手できない。

 いわき市教育委員会は、5月26日現在で転入した児童生徒数が1,015人、転出が924人と発表した。
 
 人口は増えているのか、減っているのか?

 一人ひとりが身の振り方を考え、この地に留まり、関わりのある人が去り、そして来た。
 たくさんの希望や思いや悩みが人口数と世帯数には詰まっている。 

2011年6月4日土曜日

事実の取り扱い。

 事実と意見の混同を見分けるのは難しい。
 時事的現象としてではなく、100年後を見る視点がないと、悲劇が起きているのを見過ごす事になるかもしれない。
 以前、いわき芸術館アリオスで『アトミックサバイバー』の取材をしながら、そう考えた。

 劇の中で「再処理工場からは、原子力発電所から出る『1年分』の放射性廃棄物が、『1日』で排出されます」というフレーズがあった。
 恐ろしいフレーズであるが、恐ろしくないフレーズでもある。
 原子力発電所の存在をどう考えるかで、同じ事実を、全く異なった意見の証拠として挙げる事が可能だ。

 原子力発電所から排出される放射性廃棄物は危険だと主張する側からは、365日分を1日で排出するのは深刻な環境汚染源という事になる。

 一方、原子力発電所は管理がしっかりしていて環境汚染の危険性はほとんどないと考える側だと、通常の365倍の放射性物質でも問題ない。
 なぜなら、原子力発電所の排出管理がしっかりして排出量がゼロに近くなるほど、再処理工場の排出倍率の数字は高くなるからだ。
 たとえば発電所が1で、再処理工場が365の排出なら、365倍(1年分)となる。
 だが、発電所が管理を強化して排出を0.1に減らすと、再処理工場365の排出率は3650倍(10年分)となる。

 同じ『1年分』の数字が、原子力発電所をどう見るかによって、異なった意見の証拠として挙げられる。

 放射線量と健康被害でも、同じ事が起きている。

 医療現場では『がん』を発見する方が放射線の危険よりも有益だと、防護数値から考えると高すぎるような線量を人体に照射している。
 一方、それより少ない積算線量で『がん』『奇形』『遺伝』が心配だと、恐怖を訴える人がいる。 

 チェルノブイリでの事故の後、放射線への恐怖心から妊娠中絶をしたり健康を崩す人達がたくさん出た。いわき市では、仕事を辞めて転出する若い世代の住民が相次いでいる。
 
 時事的にではなく視線を100年先に向けて、
 目の前の事実を、自分を勘定に入れず冷静に見る必要があると感じている。

2011年5月11日水曜日

学校給食に福島県産の牛乳使用==いわき市は市民目線で、ていねいに。

福島県産牛乳は安全なのに、なぜ、いわき市民は不安になったのか?
(bloggerの不具合で最終稿が消えていたので書き直しました)

 4月末に、子供が持ち帰ったお知らせで、福島県産牛乳が学校給食に出される事を知った保護者が不安になり、いわき市へ問い合わせが相次いだ騒動がありました。5月に入っても、保護者の不安が解消されない状況が続いていたようです。
いわき市のホームページに、給食で出した牛乳について記事が出ています。

『いわき市の学校給食について』(2011/4/29付)

学校給食につきましては、現在、従来のような献立での提供が行えず、保護者の皆様には大変ご迷惑をおかけしております。
また、現在はパンと牛乳の提供となっておりますが、保護者の皆様などから、現在提供しております牛乳や今後使用していく食材についてのお問い合わせを頂いているところです。
牛乳につきましては、国や県の検査により安全性が確認された原乳を使用したものが 流通しているところですが、福島県産の原乳につきましても安全性が確 認されたものが流通しているところであり、福島県内の学校へ牛乳を供給する事業者において、福島県産の原乳を使用することとなったところです。
なお、いわき市の学校給食では、4月25日以降に検査された原乳を使用した牛乳が4月27日以降に供給されておりますが、県の緊急モニタリング検査による4月25日及び4月26日の測定結果は「不検出」となっております。
農林水産物の出荷制限やモニタリング検査結果につきましては、福島県のホームページをご覧ください。


本市の学校給食については、これまでも食品衛生法など関係法令を遵守し、食材の品質や衛生管理の徹底に努めながら、安全で安心な給食を子どもたちに提供してきたところであり、今後においてもその方針が揺らぐことはありません。
食品については、国、県が検査に基づき安全性を確認しており、市としては、当然、安全性が確認されたものを学校給食で提供していくものです。



  この文書で、保護者の不安は解消されるでしょうか。これで不安が消えるとすれば、いわき市政にたいする理解と信頼が高いと、私は思います。



文書には「子供には微量でも放射能で汚染されたミルクを摂取させたくない」と考える保護者に、安心してもらえない要素が3つあります。
  • 安全を裏付けるデータが具体的に分りやすく示されていない。(HPにはデータへのリンクがあるが)
  • 行政は微量の放射能汚染を許容すると疑われている事に対する、対策や配慮が無い。
  • 子供にも親にも拒否する事ができず牛乳の摂取を強制される事態に対する不満への、配慮が無い。
以下で3つを確認してみましょう。

1.いわき市の学校給食のミルクに放射性物質は入っていない。(データを見る)

まず、福島県産牛乳の検査経過です。いわき市の文書にリンクされている福島県産農林水産物の放射能測定の実施結果から、いわき市の原乳調査を約10日ごとに抜粋してみました。
福島県の原乳の調査結果(いわき市 単位Bq/kg)
3/19採取        ヨウ素-131→980   セシウム-134→不検出  セシウム137→ 6.6
3/29採取    ヨウ素-131→  55   セシウム-134→不検出  セシウム137→不検出
4/  7採取      ヨウ素-131→  38   セシウム-134→不検出  セシウム137→不検出
4/  7採取    ヨウ素-131→  16   セシウム-134→不検出  セシウム137→不検出
4/19採取    ヨウ素-131→不検出  セシウム-134→不検出  セシウム137→不検出
4/26採取
      (乳業工場)   ヨウ素-131→不検出   セシウム-134→不検出  セシウム137→不検出
5/10採取
      (乳業工場)   ヨウ素-131→不検出   セシウム-134→不検出  セシウム137→不検出

福島県内の緊急モニタリング結果では、福島市で4月19日にヨウ素131が17.2Bq/kg検出されたのを最後に、以後すべての地域で不検出です。
乳業工場では、県内産の原乳をブレンドして作ります。県内で検査した牧場の牛乳はどこも不検出。さらに、乳業工場でブレンドした牛乳からも不検出ですから、県が検査していない牧場の原乳にも放射性物質は入っていないと推測できます。

ですから、4/27に学校給食で出された福島県産のミルクは、放射性物質が不検出だと思われます。

しかし、学校給食の乳業工場を調査した結果は公表されていません。
保護者の気持ちを思えば、学校給食ミルクの乳業工場で放射性物質を調査して、結果を保護者に知らせる手間をかける事が、いわき市の行政にとって経費と手間のムダだとは思えません。
2.行政は放射能汚染を許容するのでは?と市民が疑念。

3月に東京都で水道水が放射能汚染のため乳児の摂取制限が行われた時、乳児以外はヨウ素131=300Bq セシウム=200Bqが暫定基準値であると報道があり、行政は、暫定基準を下回っていれば飲んでも大丈夫と広報していました。
さらに、農産物の暫定基準値も同じ数字で広報していたので、今回、原乳が基準値を下回ったので安全を確認した言っても、放射性物質が入っているのではないか、どれだけ入っているのだろうと保護者が不安になったのではないでしょうか。

国の暫定基準値はあっても、いわき市の行政は主体的に市民を守ってくれると日頃から信頼されていないと、市民は疑問を抱きます。

国はヨウ素131=300Bq セシウム=200Bqを摂取制限値としています。いわき市はそれ以下なら放射能に汚染されていても給食に出すのではないか、と保護者が不安になったのです。
「国が…」「県が…」と責任を回避し主体性の無い対応をする、いわき市の行動を保護者は危惧したのです。
3.保護者の意向を置き去り。

子供の予防接種では接種するかどうか保護者に意向確認をしていますが、今回の学校給食の牛乳騒動では、子供の健康に関わる問題なのに保護者の意向は置き去りでした。子供も保護者も飲まない選択肢は与えられないのです。そのため、保護者の理解を得る丁寧さが一層求められるのですが、それが欠けていました。

たしかに、いわき市は安全なミルクを出す状況だったし、正確に伝えていたのです。が、情報と知識を伝えるとき、受け取る立場に配慮する事も大切。難しい問題です。
今回の学校給食の牛乳騒動は、『安全』であっても『安心』できない典型的なケースです。
生命や健康へ危険の恐れがあると不安になり、デマに惑わされやすくなります。行政が丁寧に対応しないと、デマや風評の火種を、行政が自ら作ってしまう危険があります。

福島県産牛乳を学校給食に出す事が、保護者への丁寧な説明を抜いてまで急ぐべきだったか、検証しておくと、いわき市は貴重な教訓を得られるのではないでしょうか。
放射能汚染をめぐる、広報の難しさを象徴する出来事でした。

行政にも、住民にも放射能汚染との戦いは始まったばかりです。
(馬上 雅裕)